教育方法学研究
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原著論文
科学教育における科学的探究の意味
D. Hawkins によるMessing About 論を手がかりに
石井 恭子
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2014 年 39 巻 p. 59-69

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抄録
  本研究は,日本の理科教育における科学的探究の意味づけとその課題を解決する展望を拓くために,1960年代の初等科学研究者であるDavid Hawkins による言説を検討したものである。
  その結果,次の二点が明らかになった。一点目は,Messing About 論における自発的な没頭と主題の意味の再解釈である。それは,科学者自らが現象の中に見る本質的な主題と同様に,子ども自身が豊かで複雑な現象の中から主題を見いだし没頭することの復権であった。彼が意味付けた主題とは,学問構造ではなく,現象から学習者自身が構造化していくものとしての主題であった。二点目は,子どもが科学する(do science)ことの重要性の主張に存在する,Hawkins の生涯を通じた科学教育目的観である。その形成においては,本人の科学哲学という学問的背景と同時に,科学哲学者として,原爆の開発と投下という,科学が社会に大きな影響を与えた経験に参加する物理学者と運命を共にした彼自身の経験が大きく影響していることが見いだされた。彼は,科学と社会の乖離に対する大きな警告をしていた。
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