教育方法学研究
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原著論文
J. S. クレイチェックの科学教育論に関する検討
―「プロジェクトにもとづく科学」に着目して―
大貫 守
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2016 年 41 巻 p. 37-48

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抄録

 本稿では,J. S. クレイチェックの「プロジェクトにもとづく科学(Project-based Science: PBS)」の理論と実践について,彼が主宰した中学校の科学教育のカリキュラム開発プロジェクトである「科学とテクノロジーを通した私達の世界の疑問の発見と調査プロジェクト(Investigating and Questioning our World through Science and Technology: IQWST)」の取り組みに焦点を合わせて検討を行う。PBS とは,比較的長期間にわたり,子どもに有意味な問題を協働で調査するプロジェクトに取り組ませ,重要な科学的な観念(idea)を学ばせる科学教育の教授法である。

 彼のPBS では,発達段階に応じた科学的な観念とそれを習得するために用いる実践(practice)を組み合わせた学習パフォーマンス(learning performance)を目標として明示することで,科学を知ることとすることを結合してきた。更に,子どもにとっての意味を重視し,発達的に適切な現実世界の問題(駆動問題(driving question))を設定することで,調査の文脈への動機づけが図られた。調査の文脈では,科学的な実践そのものの理解を促すとともに,問題に応じて様々な科学的な実践を適用する調査のあり方が「調査ウェブ(investigation web)」として提案されていた。実際の単元では,単元全体の目標となる学習パフォーマンスに向けて,授業ごとに学習パフォーマンスを設定・構造化し,それと対応した駆動問題を設定していた。これにより,科学的な観念と実践の深まりが規定されるとともに,生徒が調査ウェブに示される調査を実際に行うことで観念を学ぶことが促されていることが明らかになった。

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