物性若手夏の学校テキスト
Online ISSN : 2758-2159
第67回物性若手夏の学校
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半導体中の局在スピンとその量子技術への応用
*大野 圭司
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p. 242-254

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抄録
半導体中の伝導電子や正孔を 3 次元的に閉じ込めた構造は原子のような離散的エネルギー準位を有する。量子ドット素子はこの閉じ込め構造にトンネル接合を介して電極を取り付けたものであり、その人工原子的振る舞いが電極間の電気伝導特性により研究されてきた。なかでも電子スピンに着目した研究は半導体量子ビット研究として大きく発展している。電子の閉じ込めは微細加工技術によるほか、半導体中不純物の局在状態を用いることもできる。 量子ドット素子の研究は比較的加工が容易な GaAs などの化合物半導体から始まりその後 Si に移行している。Si への移行はより長いスピンコヒーレンス時間が得られるほか、既存のシリコン技術との整合性がよくシリコン集積回路との良好な接続性が期待できるなど様々な利点がある。 この講義においてはこれまでに私がかかわってきた半導体量子ドット構造の実験研究を中心に、その物理と応用について話したい。応用としては電子スピンの長いコヒーレンス時間を生かした量子ビット応用を紹介する。具体的にはGaAs量子ドット素子の構造とその特性、特にその電子スピンに注目した仕事を紹介する。その後 Si の MOSFET 構造をベースとした量子ドット素子とその特性、特に電子スピン量子ビットとしての応用、なかでも高温での量子ビット動作 1)や、単一量子ビットを用いたシミュレーション実験を紹介する。シミュレーション実験は運動先鋭化および量子熱機関を扱う。以下のテキストは日本物理学会誌の記事(大野 圭司、森 貴洋、森山 悟士、最近の研究から:シリコン量子ビットの高温動作、日本物理学会誌、vol. 75, No. 8 pp.472-477 (2020))著者最終稿をもとに加筆修正したものであり、高温量子ビットとシミュレーション実験について解説している。
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© 2023 大野圭司
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