磁気スキルミオンが示す電流駆動ダイナミクスの理論

抄録

強磁性磁壁やヘリカル磁性，スキルミオンなどの非共線磁化構造は，スピントロニクス分野の主要な研究対象であり，その外場駆動や集団励起は様々な物性現象や物質機能の宝庫となっている。特に，これらの磁化構造の電流による駆動・制御は多くの研究者が取り組んでいる重要なテーマである。電流による磁化駆動の機構には，主に「スピン移行トルク」,「非断熱トル ク」,「スピン軌道トルク」があり，電流による磁化駆動ダイナミクスは，これらの効果を考慮した磁化の時間発展方程式である Landau-Lifshitz-Gilbert-Slonczewski方程式を用いて調べることができる。さらに，運動の過程で磁化構造が変形しないと仮定すると，この LLGS方程式から Thiele方程式と呼ばれる磁化構造の重心運動を記述する方程式を導出できる。本稿では，Thiele方程式の導出と，それを用いたスキルミオンの電流駆動ダイナミクスの解析について解 説する。