抄録
ゼオライトや活性炭に代わる新たな多孔性材料として、金属イオンと有機配位子との自己集合反応によって合成される多孔性金属錯体( M O F )が注目を集めている。この材料が有する規則性ナノ空間は、配位子と金属イオンとの様々な組み合わせにより、その構造を1 原子レベルで思いのままに設計できる。本講義ではこのナノ空間材料の合成法や特徴を述べ、吸着剤や反応場、センサーなどへの応用について、今後の見通しも含め解説する。特に、 MOFが形成する規則性空間を駆使することで、従来法では不可能な高分子材料の創出が可能になる。コンポーネントの自在配列により、MOF 空間のサイズ、形状、表面状態は合理的に設計可能であるため、「分子で出来たナノフラスコ」として利用することで、得られる高分子やナノカーボン材料などの一次構造(立体規則性、反応位置、シークエンスなど)や 集積状態(配向化、アロイ化など)を自在に制御できる。また、巨大で複雑な高分子鎖内のほんの僅かな異種構造を見極め、夾雑混合物中から特定構造の高分子鎖のみを分離することもできる。このような機能性ナノ空間を用いた新しい科学・技術について、これまでの研究を中心に解説する。