物性若手夏の学校テキスト
Online ISSN : 2758-2159
第69回物性若手夏の学校
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非平衡超伝導の物理
− 物性若手夏の学校 2024 講義ノート −
*辻 直人
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p. 72-149

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抄録
超伝導は物質の電気抵抗がゼロになり物質中の磁場を完全に排除するような「秩序立った状態」であり、 ミクロな世界を支配する量子力学の性質がマクロな世界に現れる現象の一種である。超伝導体に強い光などを照射して非平衡状態にすると何が起こるだろうか?一見すると非平衡にすることで秩序が乱され、外から加えたエネルギーが熱に変わって、量子多体系の面白い性質が掻き消えてしまうように思われる。ところが、非平衡にすることで平衡状態では実現できなかった秩序や物性が発現する例が実験的、理論的に見つかってきている。例えば、平衡状態では Mermin-Wagnerの定理によって 2 次元以下で有限温度で超伝導転移は存在しないが、非平衡ではそのような制限は存在せず原理的には任意の次元で超伝導状態が存在可能である。実際に、超伝導秩序を保つような非平衡多体状態の例が理論的に知られている。また、光によって超伝導秩序の振幅を振動させる励起モードを誘起することが可能であり、素粒子の Higgs粒子との対応から Higgsモードと呼ばれている。Higgs モードは通常、平衡状態から離れた非線形応答領域でのみ現 れると考えられており、近年のテラヘルツ光の実験の進歩によって観測できるようになった。本講義では、このような近年進展の著しい非平衡超伝導の物理を基礎から解説したい。
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© 2025 辻 直人
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