日本海セトロジー研究
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西山海岸(新潟県)へ漂着した幼ネズミイルカ雌性生殖器の組織像
本間 義治牛木 辰男橋都 浩哉武田 政衛進藤 順治
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2002 年 12 巻 p. 25-32

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抄録

 2001年2月26日に、新潟県西山海岸へ漂着した幼ネズミイルカの雌性生殖器(卵巣,卵管=ファロピウス管、双角子宮、膣ならびに尿管)を、組織学的に観察した。全長1.02mのこの個体は、一旦砂中に埋められたが掘り起こし、臓器を摘出して10%フォルマリンで固定した。生殖器等は、ブアン氏液に再固定して切片を作成し、ヘマトキシリン・エオシンの二重染色と、マッソン・ゴールドナ(三重染色)+アルデヒドフクシンによって染色検鏡した。ところが、顕微鏡像は予想以上に良好で、充分な観察に堪え得た。卵巣は長さ19mmと21mmで、皮質部には多数の原始卵胞と扁平卵胞上皮に囲まれた一次卵母細胞、および多量の間質細胞から成る髄質部には、低柱状卵胞上皮に囲まれた一次卵母細胞と少数の閉鎖卵胞が存在していた。卵管は複雑にひだ打った粘液腺で、微絨毛をもつ高柱状上皮細胞と少数の繊毛細胞から成っていた。子宮腺は短管状で、狭い腔所を円錐状細胞が囲んでいた。膣壁は偽重層粘膜上皮であるが、空胞状の細胞と角質化した細胞層とから構成され、最外層は剥離していた。膀胱隣接部の尿管上皮も偽重層で、乳頭状を示し、萎縮核をもつ明調細胞から形成されていた。これらの像は、この個体がまだ未熟の幼獣であることを示唆している。

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© 2002 日本海セトロジー研究
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