日本人間ドック・予防医療学会誌
Online ISSN : 2759-2081
Print ISSN : 2759-2073
原著
上部消化管内視鏡検査の苦痛度を医療者は把握できるのか?咽頭反射回数,施行医評価苦痛度,受診者苦痛度からの分析
馬嶋 健一郎村木 洋介
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2025 年 39 巻 5 号 p. 696-702

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抄録

目的:上部消化管内視鏡検診において安楽な検査を提供することは,人間ドックにおいても重要な事項である.本研究は咽頭反射回数や施行医が推測した苦痛度と,実際受診者が感じた苦痛度に関して定量化した分析を行う.

方法:上部消化管内視鏡検診受診者を対象とし,反射回数と施行医が主観で総合的に推測して評価した苦痛度,受診者が採点した苦痛度スコア(NRS,最小0~最大苦痛10)を用いて分析した.受診者苦痛度と施行医推定の苦痛度が乖離している者の背景因子を,交絡を考慮したサブグループ解析も加え分析した.

結果:分析対象は652名.反射回数への苦痛度スコアの中央値は,反射0回:1,1~2回:2,3~5回:3,6~10回:5,11~19回:6,20回以上7.5で相関係数は0.41(p<0.001),施行医評価苦痛度への苦痛度スコアの中央値は,苦痛-:1,±:2,+:4,++:6,+++:7で相関係数0.48(p<0.001)であった.反射なしかつ施行医評価苦痛度-だが苦痛度スコア5以上の症例は7.6%(28/369)で,有意に関連した因子は女性,若年,ペチジン使用なし,経鼻例であった.

結論:反射と苦痛度の相関は中程度にとどまった.楽そうにみえても実は苦しいと感じている症例はまれではなく,「反射なし=安楽」と早計に考えず,丁寧な対応を心がける必要がある.

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