2025 年 39 巻 5 号 p. 703-706
今回,当院人間ドックで発見された脾腫瘤像に対して脾臓摘出術を行い,sclerosing angiomatoid nodular transformation(SANT)の診断を得た症例を経験した.症例は40代男性.脂質異常症治療中であった.人間ドック受診時の腹部超音波にて前回検査では指摘されていなかった脾腫瘤像(長径23mm)を認めた.当院総合内科で造影CTを施行し,同部位に長径35mm大の境界比較的明瞭なやや不整形の脾腫瘤像を認めた.その後転医先にて造影CT,MRI等で経過観察していたが増大傾向が続き,腹腔鏡下脾臓摘出術が施行され,病理組織所見にてSANTの診断を得た.
SANTはまれな脾臓の非腫瘍性血管病変である.ほとんど無症候性であり,画像で偶発的に発見されることが多い.増大傾向を示すことがあり悪性疾患を確実に否定する必要があるが,現時点で確定診断は外科手術による切除標本の病理診断が不可欠である.
人間ドック・健康診断で腹部超音波検査を施行した際に脾腫瘤像を指摘した場合,SANTを鑑別診断の一つとして認識しておく必要があると考える.