年金研究
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特集:論文
第6回サラリーマンの生活と生きがいに関する調査: 企業年金のあるサラリーマンにおける過去の調査との比較
長野 誠治
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2017 年 7 巻 p. 154-178

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抄録

 各調査項目に関して25年間の回答割合の変化と第6回調査の特徴は以下のとおり。

(1)基本的属性について

 婚姻・世帯状況は未婚、既婚(離別)、「ひとり暮らし」の割合が増加し、「子どもがいる」の割合が減少した。住居形態は持ち家(一戸建て)の割合が減少し、同(分譲マンション等)の割合が増加した。就業形態は「正規の社員・従業員」の割合が減少し、職種は「専門技術職」の割合が増加し、「管理職」の割合が減少した。

(2)仕事について

 「賃金」は第5 回調査から不満度が強まるとともに、「仕事の内容」「職場の人間関係・雰囲気」「仕事全体」は満足度が漸減している。

(3)自由時間について

 自由時間は「十分にある」「まあまあ」の回答割合が増加傾向にある。自由時間の過ごし方は「SNSやインターネットなど」「ひとりで趣味・スポーツなど」などひとりですごす回答割合が増加する一方、「仲間と趣味・スポーツなど」仲間とすごす回答割合が減少した。

(4)社会活動について

 「参加していない」が60%前後で推移しており、大きな変化はない。今後の参加意向は「条件によっては参加してもよい」の減少傾向、「参加するつもりはない」の増加傾向が続いている。

(5)生活の充足感について

 経済的ゆとりは第6回調査で全体として初めて「欠けている」の状態に転じた。健康及び精神的ゆとりは「満たされている」の状態が持続したが、その程度は減少した。

(6)生きがいについて

 生きがいを「持っている」人の割合が減少傾向をたどり、第6回調査で過半数を割り込んだ。生きがいを感じる対象は「ひとりで気ままにすごす」「配偶者・結婚生活」が増加傾向、「趣味」は高水準で安定推移、「仕事」「友人など家族以外の人との交流」などは減少傾向をたどっている。

(7)配偶者との関係について

 自分が配偶者の良き理解者であるかは、「そのとおり」という回答割合が75%程度を維持しているものの、第1回調査の90%超から緩やかに減少傾向をたどっている。

(8)定年後・退職後の生活について

 定年後の生活費は「公的年金」「企業年金」「退職金」「預貯金の取りくずし」の順で、「企業年金」の回答割合が減少傾向をたどっている。定年後に仕事についたかは「退職とともに職業生活から引退した」が増加傾向をたどっていたが、前回の第5回調査と比べると今回、減少に転じた。さらに、「退職後は別の企業に再就職した」「退職後も再雇用制度等により、前の会社に勤めた」が第6回調査では増加に転じた。退職に向けて個人として必要なことについては第5回まで1位であった「健康の維持・増進を心がける」を「貯蓄・住宅など、経済基盤をつくる」が上回った。「生涯楽しめる趣味などを持つ」は第5回以降、減少傾向が続いている。

(9)暮らしぶりについて

 現在の自分自身の暮らしについては、「苦しい」の回答割合が「楽だ」の割合を上回る状態が続いている。

 末尾の付論では、生きがい保有率の低下について過去からの時系列データを年齢階層別及び誕生年別(コーホート別)に分析を行った。調査回毎の年齢階層と生きがい保有率の関係については、各回調査の共通点として年齢階層が上がるにつれて生きがいの保有率は上昇する傾向がみられる。一方、誕生年別にみた生きがい保有率の経年変化については、団塊の世代や団塊以前の世代と1957年以降に生まれた世代で異なる傾向が確認された。 特に、誕生年が遅い世代については、年齢が上がるにつれて生きがい保有率が低下していく。また、誕生年が早いほど生きがい保有率の水準は高く、誕生年が低いほど生きがい保有率は低くなるという傾向も確認できた。

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© 2017 長野誠治
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