年報政治学
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〔特集〕 世界経済の変動と政治秩序
多中心的グローバル・ガバナンスにおけるオーケストレーションと政策革新
─企業と人権をめぐる実験─
山田 高敬
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2017 年 68 巻 1 号 p. 1_109-1_133

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抄録

本稿は, 経済のグローバル化がグローバル・ガバナンスにおける権威のプライベート化をもたらし, それによりガバナンス目標の達成に非国家主体の協力を必要とする 「多中心的ソフト・ガバナンス (poly-centric soft governance)」 の状況が生まれていることをまずは指摘する。その上で, そのようなガバナンス状況に伴う目標喪失リスクを極小化するために政府間組織がオーケストレーション (orchestration) を実施する可能性を指摘する。さらに, そのようなガバナンス状況では経済的誘因が使われることが予想されるものの, どのようなガバナンス・メカニズムが有効なのかについては不確定性が高いため, 政府間組織によるオーケストレーションは自ずと異なる政策実験の管理・調整をめざすこととなる。最後に, 本稿は, このようなオーケストレーションが成功する条件として当該問題領域における政府間組織の 「中心性 (focality)」 に着目し, ケーススタディーとして国連企業人権指導原則 (UNGPs) の実施過程における国連企業人権作業部会 (UNWG-BHR) によるオーケストレーションを分析する。

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© 2017 日本政治学会
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