本稿の目的は、政治リテラシーの涵養に向け、1980年代からの公共政策学におけるパラダイム転換の試みから得られる知見を検討することである。
本稿での考察から、まず、政策問題の「厄介な問題」という特性と政策問題の社会的構成という側面を踏まえた上で、政策問題の発見と定義の段階においてフレーミングと言説が果たす役割を認識する必要性と、政策問題の構造化の段階において解釈学的アプローチをもとに問題のコンテクストを分析する必要性とが指摘される。
そして、理論知・現場知・常識知といった多元的な知識と社会における多様な価値をもとにした政策形成を実践するために、開かれた議論の場の設置と、多元的政策分析による政策形成の必要性とが指摘される。
さらに、非専門家である市民が政策形成の場に参加し、政策議論を行うために、政策分析者に対しては助言によって市民の参加を助力する役割や、市民からの情報インプットを政策決定者への助言に変換する役割が求められる。また、参加の過程での市民の学習の必要性や、参加者間の相互理解と信頼醸成の必要性が指摘される。
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