年報政治学
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《特集》
  • ―政治システムのインプット、アウトプット、前提に注目して
    加藤 雅俊
    2020 年 71 巻 2 号 p. 2_15-2_36
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー

    本稿では、第二次世界大戦後の自由民主主義体制 (本論文では、とくに 「修正資本主義+代議制民主主義、すなわち資本主義社会における政治秩序」 に注目する) の存立構造とその揺らぎを、福祉国家論の観点から分析的に検討する。

     福祉国家とは、公共政策を通じて、経済成長を実現し、市民に社会的保護を提供することで、支持調達を確保する政治システムを指す。したがって、福祉国家論の知見を政治学的に再構築することは、第二次世界大戦後の政治秩序が円滑に機能してきた条件・メカニズムを明らかにする上で有益といえる。本稿では、自由民主主義体制が安定した段階を 「ケインズ主義的福祉国家」 として捉え、その諸条件を明らかにし、どのように正統性を確保してきたかを、政治システムのインプット、アウトプット、前提に注目して整理する。その上で、グローバル化とポスト工業化を背景に、福祉国家が 「競争志向の福祉国家」 へと変化していることを指摘し、それに伴い、政治システムの正統性を担保してきた三側面が揺らいでいることを確認する。最後に、新しい時代の政治秩序を構想する上での知見や自由民主主義体制の理論分析への知見など、本論文の理論的含意を検討する。

  • ―階級ヘゲモニー政治の崩壊と再生
    吉田 徹
    2020 年 71 巻 2 号 p. 2_37-2_54
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー

    ポピュリズム研究は、ポピュリスト政治家の戦略や言説に着目するもの、有権者意識・投票行動に焦点を当てるもの、政治経済的動態から説明するものなどに分類される。ただし、それぞれの研究潮流では、通時的・歴史的な文脈は必ずしも考慮されておらず、時々の選挙や政党組織における支持構造や有権者の属性、その主観的態度などが、いわゆるポピュリズム政治といかに結びつくのかを検証したものが多い。本論は、こうしたポピュリズム研究の潮流における政党組織・政党システム研究に、歴史的原因をかけあわせてポピュリズム生成の原因を探る。すなわち、1. 既存の社民政党による新規の合理的戦略によって、2. 支持動員構造が変容したため、3. 右派ポピュリズム政治の台頭を招いたと主張するものであり、具体的には、現代フランス政治を対象に、断続的に与党の座にあったフランス社会党と、西欧において最も成功したと称されるに至った極右ポピュリスト政党たる国民戦線の1980年代から90年代までの支持構造を分析することで、上記の動態的変化を跡付ける。

  • ―多文化時代の民主主義防衛
    大竹 弘二
    2020 年 71 巻 2 号 p. 2_55-2_81
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー

    民主主義の敵に対して寛容である必要はないという戦闘的民主主義の思想は、ナチスの経験を経た戦後ドイツで特に発展したが、今日ではそれ以外の少なからぬ国々でも採用されており、さらにはヨーロッパ人権条約のような国際条約にも見られるようになっている。しかし同時に戦闘的民主主義は、そのエリート主義的な人民不信や恣意的な拡大適用ゆえにそれ自体が民主主義を毀損する危険があるとも批判されてきた。特に2000年代以降、イスラムと自由民主主義の両立可能性が疑われるなかで、ヨーロッパ人権裁判所は世俗主義の擁護を名目とした各国でのムスリムの権利制限を容認する判決を下すようになったが、これに対しては戦闘的民主主義の過剰適用として批判も多い。こうした問題を受けて、近年の新戦闘的民主主義論者は、民主主義の敵を排除するだけでなく、それを包摂する実践も伴った二重戦略を構想するようになっている。それは民主主義を実体的価値として防衛する必要性を認めると同時に、万人が自由で平等な市民として参加するという手続き主義的な民主主義理解も維持するような戦略である。本論文は戦闘的民主主義論の現状を概観したうえで、それが従前批判されてきた欠点の克服に成功しているかどうかを検討する。

  • ―民主的リーダーシップをもとめて
    山本 圭
    2020 年 71 巻 2 号 p. 2_82-2_99
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー

    本論文の目的は、民主主義論においてほとんど忘却されてきた指導者の存在を、位置付けなおすことである。それは必定、これまでの自由民主主義論を再評価することを伴うだろう。というのも、20世紀の自由民主主義論は、開かれた市民社会や市民の自発性をある程度前提にすることで、おおむね指導者の問いを抑圧ないし迂回してきたからである。しかし、多くの論者が指摘するように、民主的リーダーシップ (democratic leadership) の問題にはそれ固有のジレンマが伴っている。すなわち、民主主義が市民のあいだの政治的平等を求めるのに対し、リーダーシップは指導者とフォロワーのあいだに不平等な関係を持ち込んでしまうのである。本論文では、このジレンマを解決しようとするいくつかの試みを検討しつつ、指導者の問いをデモクラシーの議論に連れ戻すこととしたい。それは自由民主主義にとって脅威であるばかりでなく、それを深化するための手がかりにもなるはずである。

  • ―政治哲学の観点から
    山口 晃人
    2020 年 71 巻 2 号 p. 2_100-2_124
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー

    政治哲学において、政党は長らく注目されてこなかった。政党が民主主義論の研究対象として前景化されたのは、ここ十年ほどのことである。本稿では、近年の政治哲学における政党研究の主要な議論を再検討することで、立法過程における議会政党の存在意義を明らかにすることを試みる。その結果明らかになるのは、政党は情報提供者として立法過程に不可欠であるが、最終的な意思決定者であるべき積極的な理由を持たず、むしろ政党が最終的な意思決定者になるべきではない一応の理由が存在するということである。その上で、既存の選挙制議院 (選挙院) に加え、無作為抽出された一般市民からなる抽選制議院 (籤院) を設置する選挙院・籤院構想を提示し、それによって政党が意思決定者となることに伴う問題を回避できることを示す。

  • 遠藤 知子
    2020 年 71 巻 2 号 p. 2_125-2_144
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー

    近年、福祉資本主義の機能不全を背景に資本主義経済を民主的にコントロールする手段として産業民主主義や職場民主主義の議論が復活している。こうした流れの中で、20世紀を代表する政治哲学者のジョン・ロールズが正義にかなう体制として生産用資産と人的資本を広く分散させる財産所有制民主主義を提唱し、その主要制度の一つとして労働者管理型企業の可能性について言及していることは注目に値する。ロールズの正義論に内在的な理由から労働者管理型企業を擁護する論者は、格差原理が目指す影響力や自尊心の互恵的な分配には何らかの職場民主主義が要請されると主張する。本稿では、これまであまり注目されてこなかった財産所有制民主主義の 「単位」 の問題に焦点を当て、個別の企業や職場内部の民主主義がミクロな単位で最不遇者の境遇改善に寄与したとしても、ロールズの正義論が目指すマクロな制度的正義が実現されるとは限らないことを明らかにする。その上で企業や職場内部の民主主義を基本構造の正義とつなげる三つの可能性について検討する。

《公募論文》
  • ―ウェッジ・イシュー戦略の帰結
    宮内 悠輔
    2020 年 71 巻 2 号 p. 2_145-2_167
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー

    欧米の先進デモクラシーにおいては、特定地域の利益擁護を目的とする地域主義政党が数多く活動し、ときに既成政党に迫る支持を集める。しかし、地域主義政党間で競合が起きた際の政党の政策変容については、十分に検討されてきたとは言い難い。本稿では、ベルギーの地域主義政党「ヴォルクスユニ」 (VU) を事例にとり、政党機関紙 『われわれ―フランデレン・ナショナル週刊新聞』 を用いて分析を実施した。この際、他党の政策方針を分裂させる 「ウェッジ (楔) ・イシュー」 の概念を手掛かりとした。その結果、地域主義政党 「フラームス・ブロック」 (VB) が仕掛けた排外主義というウェッジ・イシューによって、VUの政策の一貫性が動揺したことがうかがえた。VUは全面的に排外主義に転じることはなかったものの、強硬な移民・外国人政策を完全に拒絶することもできず、時折VBに近い立場を示唆することがあった。ウェッジ・イシューにあたらない領域的要求ではVUの政策が一貫していたことも、VUの移民・外国人政策における揺らぎを示す証左である。以上から、地域主義政党間の競争においてウェッジ・イシュー戦略が効果を発揮したことが明らかとなった。

  • ―国連エルサルバドル監視団 (ONUSAL) と日本の対応
    庄司 貴由
    2020 年 71 巻 2 号 p. 2_168-2_190
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー

    1993年後半、日本は歴史的転換期を迎えていた。非自民連立政権が誕生し、長らく続いた五五年体制が崩壊する。その直後、細川護熙首相が政治改革を最優先に掲げた結果、政治指導者たちはPKOをめぐる議論から遠退き始める。それでは、ONUSAL参加への道筋はいかにして整えられたのか。本稿の目的は、ONUSAL派遣をめぐる政策決定過程を、主として外務省に着目して明らかにすることである。

     日本の対エルサルバドル外交は、外務省中南米局が準備した 「二つのD」 (民主主義と開発) 政策によって開かれた。和平合意の成立を機に、中南米局は 「二つのD」 の 「中核国」 にエルサルバドルを据え、中南米外交の強化を図っていく。クリスティアーニ大統領から選挙監視要員の派遣を要請されるや、中南米局と総理府国際平和協力本部は内々で調査を進め、武装強盗など紛争当事者以外の脅威まで 「発見」 するに至った。そうして得られた情報は、当時議論が集中した自衛隊や政治改革と掛け離れ、国会での建設的な議論に結び付かなかった。だが、ONUSAL派遣をめぐる営みは、新たに地域局主導のアプローチが形成される端緒を意味したのである。

  • ―経済優先の時代に政治座標軸の再生は可能か?
    髙山 裕二
    2020 年 71 巻 2 号 p. 2_191-2_212
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー

    本稿では、政治座標軸が溶解してゆく 「経済優先の時代」、すなわち体制が民主化すると同時に大多数の国民が経済成長を第一に求めるような時代の先駆けと言えるフランス第2帝政において誕生した自由主義 「第2世代」 の理論を検討する。先行研究では、フランス革命後の自由主義 「第1世代」 であるバンジャマン・コンスタンやフランソワ・ギゾーに関心が偏重してきたが、2月革命後の第2帝政期に政治活動を始める自由主義 「第2世代」 は前世代と違って普通選挙制を受容することで初めて民主化する時代の政治座標軸として〈リベラル〉を形成しえた。具体的には、1863年の選挙の際に結成された 「リベラル連合」 のなかで理論形成の中心的な役割を担ったプレヴォ = パラドル (1829‒70) やE・ラブレー (1811‒83) の分権論に本稿では着目し、第2世代が自治 (政治教育) を争点に一つの党派としての〈リベラル〉を初めて形成しえたことを明らかにする。と同時に、同世代が前世代の自由主義者から継承する言論の自由や議会主義というリベラルな価値は保守主義者も共有しうる価値として提示されたことを指摘する。この考察を通じて、「経済優先の時代」 における政治座標軸の再検討という政治 (学) 的課題について、思想史研究の立場から取り組む。

  • ―能力強化に隠れた国内政策への道標
    髙𣘺 敏哉
    2020 年 71 巻 2 号 p. 2_213-2_236
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー

    グローバル化の進展とは相反するように、今世紀に入り各国で国家安全保障が政策領域として台頭してきた。国家安全保障は脅威やリスクに対する能力の強化という観点から主に議論されてきたが、それは国民 (Nationals) や国内社会との関係を含み、国民に如何に政策を提示し支持を得るかという国内関係から切り離すことができない。冷戦初期の米国におけるウォルファースとラスウェルの論稿は、国家安全保障が初めて政策名に冠された時代の目撃者ともいうべき論稿であるが、国家安全保障政策の必要性は認めつつも、それに伴う絶対性への警戒感を共有し、その国内関係へ重要な分析の視点を与えてくれる。ウォルファースは価値、規範性、主観と客観の齟齬、ラスウェルは市民的自由との対峙、民主的政治過程の担保、包括性から絶対的な国家安全保障の限界を指摘するが、それは冷戦初期の米国の国家安全保障政策への批判を越え、テロ、疫病など非伝統的安全保障の脅威が増す現代で、国民が政府に必要な保護を求めつつも、その政策を厳しく監視し評価するための議論の必要性を示唆する。そこには国民の不安や恐怖を軽減し、政府と国民との関係において如何に信用を確保するかという国家安全保障の隠れた課題が提示されているのである。

  • ―ジョン・デューイにおけるナショナリズムと教育
    石田 雅樹
    2020 年 71 巻 2 号 p. 2_237-2_255
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー

    本稿は、ジョン・デューイにおける 「市民性教育」 論と 「国民性教育」 論を比較検証し、その教育論におけるナショナリズムの位置づけを明らかにしたものである。

     デューイのナショナリズムについてはこれまで、第一次大戦期におけるアメリカ参戦支持論などを中心に研究が行われてきたが、この時期に展開した 「国民性教育」 の内実について十分な検証は行われてこなかった。本稿はこの時期における 「市民性教育」 と 「国民性教育」 との関係性に注目し、両者の共通点と相違点を検証することで、デューイの教育論におけるナショナリズムの意義を明らかにした。つまり一方でデューイが、「市民性教育」 論によってナショナルな枠組みを超える視点を提示しつつも、他方では 「国民性教育」 論同様に学校教育にナショナルな統合機能を期待していたことを示し、双方においてデモクラシーとナショナリズムとが不可分な形で結びついていることを明らかにした。またデューイは 「市民性教育」 と 「職業教育」 との一体性を主張したが、その 「職業教育」 の在り方もドイツ的価値観を批判し、アメリカの価値観が投影されたものであった。本稿は以上のような点で、大戦期におけるデューイ教育論とナショナリズムとの関係を明らかにし、その可能性と限界を論じた。

  • 淺野 良成
    2020 年 71 巻 2 号 p. 2_256-2_279
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー

    本論文では、日本の有権者が外交・安全保障イシューを重視する条件を、置かれた情報環境に注目して検討する。近年、選挙で外交・安全保障を重視する有権者が増加傾向にある。一方で、日常生活で実感し難い対外関係を重視する人たちの特徴について、投票行動研究は十分な説明を用意していない。また、マスメディア研究ではしばしば、有権者の関心はメディアの報道総量の多寡が規定するとされるが、その説明力は必ずしも高くない。しかし、外交問題が直接経験し難い分野である以上、その重視度と情報環境が無関係だとも考えにくい。そこで本論文では、報道総量の多寡とは異なる側面から情報環境を取り上げ、選挙で外交争点が重視される条件付けを検討する。具体的には、メディアが外交・防衛問題の報道で取り上げるアクターの党派的な偏りへ注目する。分析の結果、報道対象が与党へ偏った新聞に接触した場合、有権者は外交・安全保障に関わる主要政党の主張をより幅広いスケール中で認知し、選挙でも外交・安全保障問題を重視する傾向を確認した。

  • ―規定要因としての選挙結果
    西村 翼
    2020 年 71 巻 2 号 p. 2_280-2_302
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、「政党は誰を公認し、それを規定する要因は何か」 との問いに対し、地元性という属性に注目して検討することである。地元候補は個人投票を有するため議席確保に貢献する一方、政党規律に対して自律的であるために党の一体性を損ねる。よって、政党は地元候補の公認を巡り、議席確保と一体性保持のどちらを取るかというジレンマに陥る。Shugart et al. (2005) 等の研究は選挙制度によって候補者の属性を説明してきたが、これには同一選挙制度下での属性の多様性を説明できない等の限界がある。そこで本研究は、選挙区毎の選挙結果という選挙制度よりもミクロな要因によって、候補者の地元性を説明する。具体的には、政党は前回敗北し苦戦が予想される選挙区では地元候補を擁立して議席確保を優先し、余裕のある選挙区では非地元候補を擁立して一体性保持を図ることで、2大目標の両立を図ると主張する。独自に作成した自民党の衆議院選挙候補者データを用いて行った実証分析の結果、以上の仮説は支持された。

  • ―コンジョイント実験による忌避要因の解明
    坂本 治也, 秦 正樹, 梶原 晶
    2020 年 71 巻 2 号 p. 2_303-2_327
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー

    1990年代末以降、日本では特定非営利活動法人 (NPO法人) や一般社団法人などの新たに創設された法人格を有する (広義の) NPOが多数誕生した。組織レベルでみた場合、NPOの活動は明らかに活性化している。にもかかわらず、一般の人々のNPOへの参加は依然としてまったく広まっていない。

     なぜ多くの日本人はNPOへの参加を今なお忌避しているのであろうか。どのような要因が参加忌避を引き起こす原因となっているのであろうか。どうすればNPOへの参加をより増やしていくことができるのだろうか。

     これらの点を探索的に解明するために、本稿では筆者らが独自に実施したオンライン・サーベイのデータを用いて、コンジョイント実験 (conjoint experiment) を通じてNPOへの参加の規定要因の解明を試みた。

     分析の結果、デモなどの政府への抗議活動を行うこと、多額の寄付を集めること、自民党寄りないし立憲民主党寄りの組織であることは、参加忌避に大きな影響を与える要因であることが明らかとなった。つまり、NPOの 「政治性」 やNPOの 「金銭重視」 姿勢が参加忌避をもたらす主要な原因になっていることが本稿の分析から示唆される。

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