年報政治学
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〔特集〕 政治と教育
  • 竹島 博之
    2016 年 67 巻 1 号 p. 1_11-1_30
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/06/10
    ジャーナル フリー

    日本では, 18歳投票権への引き下げを機に, 小中高等学校における有権者教育に大きな注目が集まっている。有権者教育を充実させることで政治への関心を高め, 若者の低い投票率を改善するためである。しかし, 近年の意識調査は, 若者の政治的関心が高まっているにもかかわらず投票率が下がるという矛盾した傾向を示している。本稿は, こうした若者の政治意識の現状を分析して若者の投票率向上に資する対策を探り, その中で有権者教育が果たす役割とその限界について考察している。若者の低投票率は, 仕事やアルバイトの忙しさ, 政治的無知や政治的無関心, 政治的有効性感覚の欠如に起因する。そのため, 投票率の向上には, 有権者教育の充実だけでは限界があり, むしろそれ以上に, 投票環境の改善や情報発信の工夫といった総合的な対策が求められる。有権者教育が効果を発揮するのは, 主には政治的有効性感覚の改善である。ただし, 投票の質を高めるという点では, 政治的リテラシーを育むシティズンシップ教育の導入が有効であると考えられる。

  • 小玉 重夫, 荻原 克男, 村上 祐介
    2016 年 67 巻 1 号 p. 1_31-1_52
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/06/10
    ジャーナル フリー

    これまでの政治学・教育学では, 1950年代を教育において文部省対日教組による保革のイデオロギー対立が激化した時期であると捉えることが一般的であった。それに対し本論は, そうした表面上のイデオロギー対立が注目される中で, その底流ではこの時期に教育の脱政治化が進行していったことに焦点を当てて, 教育行財政の制度と地方教育行政の実態がむしろ脱政治化へと向かったことを歴史的な検証から明らかにすると同時に, 教育行財政の制度・実態だけでなく, 現場の教育実践のレベルにおいても, この時期に脱政治化の萌芽が生じてそれが進行してきたことを示した。具体的には, 教育行財政の制度面 (2節), 教育関係団体秩序の側面 (3節), そして教育運動, 教育実践の側面 (4節) から論証した。以上の作業を通じ, 1950年代の教育政治について通説とは異なる理解を提示すると同時に, 教育が政治化する陰で, 現在に至る教育の脱政治化への転換点が1950年代に埋め込まれていたことを明らかにした。

  • 河野 有理
    2016 年 67 巻 1 号 p. 1_53-1_76
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/06/10
    ジャーナル フリー

    能動的な政治主体の構成員をいったいどのような名前で呼べば良いのか。「良民」 か 「士族」 か, はたまた 「士民」 か (「市民」 なる語はかなり新出来である)。東アジア世界の近代に共通の難問のひとつの解として, 1920年代以降, 急速に浮上したのが 「公民」 という概念であった。本稿では, 蠟山政道の 『公民政治論』 (1931年) に焦点をあて, この 「公民」 概念が同時代の 「政治と教育」 問題を考える上での鍵概念であることを示そうとした。
        蠟山は 「公民」 について, それを 「社会の発見」 に引き付けて理解しようとする同時代の他の論者 (たとえば大島正徳) とは異なり, 終始, 政治的存在として理解しようと試みた。蠟山にとって, したがって, 公民教育とは政治教育であり, そこでは多数決の意義や政党の持つ積極的な道徳的意味が教えられるべきだった。
        政治を教育や倫理と不可分とみなすこうした蠟山の政治観は, 政治をあくまで権力の体系, 目的達成のための手段とみなす丸山の政治観とは異なっていた。

  • 名和 賢美
    2016 年 67 巻 1 号 p. 1_77-1_103
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/06/10
    ジャーナル フリー

    本稿では, 公民科教育を中心とする市民教育論とは一線を画し, 市民教育の要諦を言語教育, 特に論理的表現力と批判的思考力の涵養に定め, 両能力を高める教育手法としての型作文指導と型発問指導という授業の実践報告をする。さらに双方の指導の相関について因子分析により考察する。まず第1節では, 独自開発した型作文の書き方や指導法について, また大学, 高校, そして小学校における7年間の指導実績について概説した上で, これらの指導成果をアンケート調査等により確認する。続く第2節では, まず型発問指導の経緯および大学での6年間の指導実績を概説した上で, データ読解による型発問の具体的な指導法とその成果について説明する。さらに, アンケート調査を用いて確認的因子分析を行い, 型作文と型発問の同時指導が有効であることを明らかにする。以上の議論を踏まえて, 型作文は開発者以外の者も効果的に指導可能であると, また型発問は大人数講義でも活用可能であると主張する。

  • 苅部 直
    2016 年 67 巻 1 号 p. 1_104-1_116
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/06/10
    ジャーナル フリー

    丸山眞男の文章は, 現在は日本の高校教育において, 一種のシティズンシップ教育の材料として, 国語教科書に掲載されている。その丸山は, 高校教育については多くの言及は残していないものの, 大学教育をめぐって独自の見解を抱いていた。もともと戦後日本の大学においては, 丸山の師, 南原繁によって, 政治に参加する 「市民」 養成のカリキュラムとして, 「一般教養科目」 が設定されていた。しかしその機能不全が明らかになった1960年代に, 丸山は, ヨハン・ホイジンガの著作 『ホモ・ルーデンス』 からヒントをえて, 独自の大学教育論を構想していたのである。

  • 村上 弘
    2016 年 67 巻 1 号 p. 1_117-1_140
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/06/10
    ジャーナル フリー

    日本の政治学教育 (主権者教育) について, 目的, 内容, 手法 (教え方) を整理し, 見解を述べるとともに, とくに内容の面について, 2点を中心に考える。第1に, 教えるべき項目群を民主主義, 市民社会などの政治理念から体系的に導出できないか試みる。第2に, とくに日本で理解が弱いと思われる 「多元的民主主義」 や, その具体的な理解につながる政治権力への批判的視点や政党システムに関する教育について, 内容や教え方を検討する。
        教える内容について, とくに高校までの段階では 「政治的教育の中立性」 による制約があるが, 中立性と, 多元的・批判的な見解の紹介とは両立しうる。多元的民主主義や政府への批判的視点は, 政治史, 政治思想, 政治制度, 比較政治などを通じて理解してもらうべきだ。各政党の論評が難しい場合には, 政党システムや 「左と右」 の座標軸を教えることで, 政治を比較し判断する視点を身に付けてもらうこともできる。
        教え方については, 複数の情報や見解をもとに考え議論する力を付けさせるとともに, 集団作業, 政治参加, 市民活動などの経験を促すこと自体が有効である。

〔公募論文〕
  • 成田 大起
    2016 年 67 巻 1 号 p. 1_141-1_162
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/06/10
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は, 社会統合における動機づけ問題に対して 「認知的アクセス」 という新たな視点を導入し, それによってA. ホネットの承認関係を媒介とした社会統合がJ. ハーバーマスの法を媒介とした統合に比べ, 普遍的な規範を支えにしながらも社会成員たちを統合の規範的目標へと動機づけることのできる社会統合のあり方として優れていることを示すことにある。規範を実現し不正義を改善するという目標に社会成員がどのように動機づけられるかを説明するという問題は, 現実の社会に焦点を当てる政治理論にとって喫緊の課題である。近年の政治理論は, この問題を専ら社会統合の構想がどの程度文化的な特殊性を取り込むべきかという観点から考察しており, 普遍性/特殊性という問題含みの二文法に陥っている。本稿はドイツの批判理論がイデオロギー批判という文脈で扱ってきた認知をめぐる議論を動機づけ問題に導入した。ハーバーマスの社会統合とホネットの社会統合を比べ, 後者の優位性を示すことを通じて, 本稿は普遍的な規範であっても社会成員がどのようにそれを実現する必要性に認知的にアクセスし, 規範の実現に向けて動機づけられるのかを説明する道筋を示した。

  • 真田 尚剛
    2016 年 67 巻 1 号 p. 1_163-1_184
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/06/10
    ジャーナル フリー

    本稿は, 1976年10月に閣議決定された 「防衛計画の大綱」 (防衛大綱) に至る過程について, 1970年代前半における国内環境に着目し, 論じるものである。まず, 世論調査の結果と防衛政策関係者の認識の間に乖離があることを明らかにする。次に, 世界最大の航空機事故である雫石事故, 史上初めての自衛隊違憲判決である長沼裁判, 革新勢力の伸長による保革伯仲, 各地での反自衛隊事件を受けて, 防衛政策関係者が従来にないほどの強い危機感を覚えた点を分析する。最後に, 彼らが国内での個別具体的な事案の発生を受け, 防衛政策や自衛隊の正当化を図るために, 1972年10月の4次防で防衛構想と情勢判断を初めて明示し, 1976年10月にはさらに詳しい内容となる防衛大綱を策定するに至った点について解明する。結論として, 世論調査ではなく, 日本国内での防衛問題に関連する批判的な事案の発生により, 防衛政策関係者が防衛政策や自衛隊の正当化を図るべく, 国民への説明の必要性を認識し, 初めて防衛大綱を策定するに至ったことを立証する。

  • 酒井 大輔
    2016 年 67 巻 1 号 p. 1_185-1_207
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/06/10
    ジャーナル フリー

    大嶽秀夫の政治学の特徴について, 従来の日本政治学史研究では, ①多元主義, ②実証主義的・自然科学的な方法, ③戦後政治学と大きく相違するもの, として理解されてきた。また, 彼の方法の時間的変化を捉えていないなど, 一面的であった。しかし1980年代以降の大嶽の変化は, ①~③のイメージの再考を迫るものである。本稿は, 彼の80年代以降の実証研究の内容にも立ち入って, 彼の方法や理論枠組の変化を検証する。大嶽は既に1970年代当初から, 影響力の遮蔽性やパースペクティブの概念により, 多元主義の弱点の克服を試みていた。そして80年代には, イデオロギー対立の枠組により, 構造的対立や政治潮流のサイクルをその分析の中心とした。こうした変化は, 多元主義の枠組からの移行であるとともに, 政策過程分析に思想史的方法を導入するなど, 戦後政治学の方法を継承するものであった。

  • 勝又 裕斗
    2016 年 67 巻 1 号 p. 1_208-1_232
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/06/10
    ジャーナル フリー

    本稿では, 候補者レベルの政策位置を用いた空間投票を分析する。有権者や候補者の自己政策位置を尋ねるサーベイ調査においては, 回答者が回答の際に想定する政策空間が異質であるために回答された自己政策位置を直接に比較できないという問題が生じる。この問題を解決するために, 政党の政策位置の回答をブリッジ観察として自己政策位置をリスケーリングし, 有権者と候補者の政策位置を同一空間上に推定した。推定された政策位置を用いて近接性モデルに基づく空間投票の分析を行った結果, 有権者は政策距離の近い候補者に投票しやすいことが明らかになった。さらに, このような候補者レベルの空間投票のメカニズムを分析したところ, 有権者は候補者の所属政党との政策距離だけではなく, 候補者自身の政策位置との距離による投票選択を行っていることが明らかになった。このように有権者が候補者個人の政策位置を理解して投票を行っているという結果は, 空間投票研究に新たな知見を付け加えるものである。

〔書評〕
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