年報政治学
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〔公募論文〕
岸信介次官更迭事件 :
「政党政治以後」 の政治経済構造と商工省
米山 忠寛
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2018 年 69 巻 1 号 p. 1_341-1_363

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抄録

岸信介は戦後日本政治の重要人物である。加えて戦前の満州での活動や東条内閣商工大臣としての経歴から, 戦前戦後の日本政治を架橋させる役割を期待される存在である。ただ, 戦前からの有力者として描かれてきたことで, 結果的に一種神話化された岸像が形成されてきた。本稿では商工官僚としての 「岸の限界・失敗」 を取り上げることで, 等身大の商工官僚・岸の姿を示そうと試みる。その際に1940年末に岸信介商工次官が更迭された事件を検討の対象とする。同事件はしばしば小林一三商工大臣との大臣・次官の不仲や, 「自由経済―統制経済」 の対立として説明される。改めて背景にある政界官界財界の関係の変容や安定的な戦時の政治秩序や均衡状況の中に位置付け直すことで, 「政党政治以後」 の政治経済構造の把握に繋げたいと思う。結果的にこの分析の過程は当該期の構造変化に翻弄される岸の状況を映し, 戦後を視野に入れた岸像の検討にも役立つものと考える。

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