年報政治学
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《特集》
尖鋭危機と政党システム変化
―2010年代のスペイン・ポルトガル・ギリシア
横田 正顕
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2021 年 72 巻 2 号 p. 2_15-2_43

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抄録

スペイン、ポルトガル、ギリシアの3国は、2010年代に欧州債務危機に始まる連続的な外生性の尖鋭な危機に襲われ、その中で政党システムの劇的な変化を経験した。本論文の目的は、一連の危機の中で政党間の競争構造が変化するメカニズムについて比較考察することである。本論文では、政党システム変化に関するKenneth Robertsのモデルに倣って、主流派政党によるカルテルの衰退と、「代表の危機」 と、非主流派の挑戦者政党の台頭とを描く。3国においては、主流派政党間の責任転嫁のゲームと、現存デモクラシーの脱正統化の程度と、「運動政党」 としての挑戦者政党の成功の程度が異なっていた。また、第1の尖鋭危機と第2次尖鋭危機とがもたらす紛争の次元も異なり、一部には各国固有の国内危機の尖鋭化も加わった。3国の政党システムの現状における大きな違い―2大政党システムの断続平衡 (ギリシア)、主流派カルテルの半壊による開放的競争の持続 (スペイン)、政権構成のレパートリーの追加 (ポルトガル)―を説明するには、これらの偏差を考慮に入れる必要がある。

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