年報政治学
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《特集》
日本の主権者は誰なのか
―幕末駐日外交官の日本認識と外交1858~1862
福岡 万里子
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2022 年 73 巻 2 号 p. 2_13-2_41

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抄録

 安政の五ヵ国条約が天皇の承認を得ず調印されたことは同時代的にも国内に広く知れ渡り幕末の政治動乱を引き起こす重要な契機となったが、無勅許調印の事実は、1859年以降日本に着任した西洋外交官らには幕府により秘匿され、それをおそらく察知していたと見られる米国駐日総領事ハリスも、その経過については外交団内で沈黙を守った。そのため、駐日外交団や居留外国人の間で、日本の主権者により現行条約が批准されていない事態として、条約無勅許をめぐる認識が形成されるようになるまでには、最も早く見積もって1862年頃までの数年間がかかった。本稿は、こうして生じた西洋外交官らの間の日本認識上のギャップが、通商開国後に浮上した度重なる外国人襲撃殺害事件や開港開市延期問題等に関する彼らの対日外交に水面下で影響を与え、西洋駐日外交団の間の外交方針の分裂や転回を引き起こしていた実態を論じ、条約勅許獲得が最終的に外交団の政策目標になっていく経過を展望する。

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