年報政治学
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《特集》
開港場と直轄県
―新潟津留問題を中心に
松沢 裕作
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キーワード: 外務省, 知事, 津留, 新潟
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2022 年 73 巻 2 号 p. 2_60-2_78

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抄録

 本稿では、維新後に開港された新潟を素材として、近世・近代移行期日本の地方の編成のあり方と、開港場において展開される対外交渉との関係について考察を加えた。近世社会における対外交渉は、それぞれの地点が、対外関係を担当する「役」を負うという点で、近世的な身分制の構造に規定されていた。幕末開港期にも、開港場の奉行は対外関係を取り扱う特殊な役人であった。維新後、開港場を管轄する直轄県の官員が、外国官、のちに外務省の官員を兼任するという形でこの状況は継続する。ところが、この方法は、開港場を管轄する直轄県当局の方針と、後背地で発生する諸問題を管轄する直轄県との間で方針の相違を生む。明治2年に新潟で発生した米穀移出の禁止(津留)問題はこうした問題の一例として理解することができる。こうした状況は、開港場が、対外関係を基軸に組織される特異な空間であるという点で、列強にとっても好ましいものであったが、廃藩置県による空間の均質化はこれを不可能とする。行政権の回収が列強と日本政府の間で問題として焦点化するのは、こうした状況を迎えたときのことであった。

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