自然環境科学研究
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サンヨウアオイ集団における核型変異
内野 明徳濱村 政夫
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1997 年 10 巻 p. 31-34

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抄録
広義のサンヨウアオイ(Heterotropa hexaloba F. MAEKAWA)のほとんどの個体は類似の核型 (2n = 24) をもっていて,染色体2の二次狭窄および染色体12の付随体の有無によるわずかな変異が知られているのみである.本研究は,サンヨウアオイ集団における染色体変異と異なる核型をもつ個体の集団内分布を明らかにすることを目的とした.ただし,変種である狭義のサンヨウアオイ(var. hexaloba)とキンチャクアオイ(var. perfecta)とを分類学的に区別してはいない.それは,両変種の区別点の一形質である雄蘂群組成には大きな変異があり,雄蘂群組成から両変種を区別することは困難だからである.
 著者らは,熊本県の3集団と佐賀県の1集団からの計114個体の核型を分析した.熊本県の大通峠(Ot)集団の66個体では,3種類の核型(A,B,C)が区別できた.核型Aは2n = 24で,11対の中部動原体型染色体(No. 1 - 11)と1対の小さな次中部動原体型のSAT染色体(No. 12)から構成されていた.この核型は最も高頻度で観祭され,他の3集団ではすべての個体がこの核型であった.したがって,この核型Aが標準的な核型であると考えられる.核型Bは第8染色体対の1本の長腕に介在裂の付随体が存在する点で,核型Cは第2染色体対の1本が次端部動原体型である点で核型Aと異なっていた.Ot集団でマッピング調査を行った8 m × 9 mの範囲では,核型Aの個体はランダム分布をしていたが,核型BとCの個体は集中分布をしている傾向にあったこの分布パターンは自花受精とアリによる種子散布の結果によるものと考えられる.
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© 1997 公益財団法人平岡環境科学研究所

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