抄録
ナガレホトケドジョウLefua sp. は,環境省の絶滅危惧種(IB指定)としてレッドデータブックにも記載されている.本種に関するこれまでの個体群遺伝学的な研究は,本種が遺伝的に二つのグループ(山陽群と紀伊—四国群)に分かれることを明らかにしてきた,本種は,鳥取県では,2003年に1個体が捕獲されるまで発見の報告がなく,それ以後、1個体も発見されてこなかった.筆者は2007年に鳥取県の千代川の,ある支流で本種6個体を捕獲した.本論文では,鳥取県で捕獲されたこれら6個体と,比較のために岡山県で捕獲された11個体を遺伝的に調べた.得られたDNA分析の結果は,これまでの研究で報告されているDNA分析データとも比較された.今回の研究結果は,鳥取県の千代川水系に生息している本種の個体群は,近隣県の個体群とは遺伝的に異なった地域固有群であることを示すものであった.