抄録
北海道にはエゾリスおよびアカネズミが生息しており,オニグルミの堅果を貯食する習性をもっている.これらの動物は大型種子を分散貯蔵する.森林生態系における立枯木や倒木はそれ自身が主要な資源である.樹木伐採後の残材は,立枯木や倒木と同様な機能をもつと考えられる.本研究では,エゾリスがいくつかの残材堆積物を利用していることを報告し,林床における残材堆積物の重要性を議論することを目的とし,残材堆積物のどの属性がエゾリスの利用に影響しているかを検討した.その結果,エゾリス食痕数に対して残材堆積物のオニグルミ母樹からの距離で負の関係が,残材堆積物を構成する材の本数で正の関係がみられた.エゾリスは残材堆積物を安全な採餌場所として利用していると考えられる.