2025 年 65 巻 4 号 p. 291-296
鋼材を浸炭処理する際に異常粒成長が発生すると,熱処理ひずみの増大や疲労強度の低下が問題となる。析出物を用いた結晶粒ピン止めがその抑制に有効であるため,析出物の粒度分布決定が重要である。解析法には,間接法である小角散乱法や直接法である透過電子顕微鏡(TEM)観察が用いられている。前者はサイズ決定の精度に,後者は代表性の担保に問題がある。今回我々は,TEMよりも広い領域を観察できる走査電子顕微鏡(SEM)による評価法を検討した。極低加速電圧SEMを低加速電圧で使用し,低エネルギーの二次電子を選択的に捕集することで,AlNを母相から明るいコントラストで識別できる。この手法を旧γ粒径の異なる二種類の歯車に適用し,AlNのサイズ別存在頻度を決定した。