熱帯農業研究
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原著論文
水田水利施設の地表面を自生種で被覆する補強技術のガーナ内陸低湿地における現地適応性
團 晴行沖 陽子廣内 慎司
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2018 年 11 巻 1 号 p. 1-7

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抄録

ガーナ国においてはコメの需要が増加しており,コメの消費量の伸びが生産量の増加に追いついていない状況にある.国際農林水産業研究センターは,国際機関等によって設置支援された水田が十分に活用されていないガーナ内陸低湿地を研究対象地として,被覆植物を活用した水田水利施設の補強技術の開発に取り組んでいる.技術の開発に際し,現地植生,生育基盤,および農家意識を把握することにより,現地適応性を確認した.植生調査では,1年半にわたり4集落で全34種を同定し,水田水利施設に自生する植生状況を明らかにすると共に,水田水利施設への補強技術に供することが可能な自生種として基礎データを蓄積した.土壌硬度や三相分布といった土壌の物理性から,水田水利施設は自生種を被覆植物として導入できる生育環境であると判断した.農家意識調査では,①イネは換金作物としての価値が非常に高いこと,②水田基盤整備に対して農家は,堅固な畦畔造成を最重要視していること,③稲作を継続する上での問題点としては,水田基盤が整備済みであっても農家は依然として,「稲作の継続的な栽培には,安定的な水資源の確保が極めて重要である」と考えていることを明らかにした.以上から,被覆植物を活用した水田水利施設の補強技術は現地適応性を有していることを示した.

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© 2018 日本熱帯農業学会
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