抄録
エポキシ樹脂の硬化剤として, 2, 3, 5-トリメチルフェノール (TMP) ノボラックを用い, エポキシ樹脂硬化物の耐水性および耐熱性の向上をはかった。まず, 酸性条件下でのTMPとホルムアルデヒドとの反応性をo-クレゾール (o-C) の場合と比較検討した。その結果, ホルムアルデヒドの消失速度はo-C系よりTMP系の方が速かった。次に, 分子量分布の似ているTMPノボラックとo-Cノボラックを合成しその物性を比較したところ, TMPノボラックの方がTg, 熱分解温度, 及び溶融粘度とも高い値を示した。さらに, TMPノボラックをエポキシ樹脂の硬化剤として用いた場合, o-Cノボラックを用いた場合と比較して, ゲル化時間が長く硬化反応が遅かった。しかし, 両者の硬化物物性を比較したところ, TMPノボラック硬化型エポキシ樹脂硬化物の方が, 吸水率が低く, 吸水後の体積抵抗率が高く, また耐熱性にも優れていた。これらは, TMPのm-位のメチル基による疎水効果および立体障害による主鎖の剛直化のためと考えられる。