抄録
動力学的方法により複合材料における相間相互作用について研究した。その概要は次の通りである。
(1) ABS樹脂はゴム分子のグラフト反応により力学的損失のピーク温度は, より低温に移行する。またグラフト量が多くなると損失のピークが小さくなる。このことは, ゴム粒子の作る “サラミ構造” の中で, AS共重合体がグラフトされていることによるものと理解される。
(2) 有機金属化合物をエポキシ-フェノール樹脂系に添加して硬化すると抗張力を増大する。この現象はキレート生成および充填剤と有機金属化合物の相互作用によるものである。
(3) MMA-ブチルアクリレート-アクリル酸の共重合体に充填剤を添加した系では, 表面電荷が正の充填剤を用いるとTgと抗張力が増大し, 負の電荷の充填剤では低下した。このような系では静電気的な相間相互作用の寄与が大きいことが考えられる。
(4) 竹材の溶剤抽出に伴なう粘弾性変化を調べた。抽出に伴ってまず抗張力は増大し, さらに抽出が進むと減少した。竹材の力学的性質ではリグニン-セルローズの相互作用効果が重要である。
複合材料系では相間相互作用の効果により, 力学的性質が改良されることは明らかである。