Neurosonology:神経超音波医学
Print ISSN : 0917-074X
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内頚動脈系閉塞性脳血管障害におけるacetazolamide負荷TCDの臨床的意義
―脳血行再建術施行例の検討から―
武山 明子窪倉 孝道堀田 二郎小澤 仁
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1998 年 11 巻 2 号 p. 62-66

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抄録

1990年に人工弁患者でmicroembolic signals (MES) が検出されて以来, その臨床的意義については多くの研究がなされてきたが, 未だに結論が得られていない.そこで, 筆者らは多数例で検討するため4施設の人工弁患者580例におけるMESの意義について再解析を試みた.
MESの定義は特徴的な音を呈し, 心周期にランダムに出現し, 背景より3dB以上のintensityを有し, ドプラスペクトラムの一側に出現するものとした.対象患者の1時間あたり一側中大脳動脈で検出されるMESの個数と検出頻度を明らかにするとともに, 年齢, 弁置換後の期間, 弁の種類とサイズ, 心調律, 抗凝血薬療法, および弁置換術3ヵ月以後の神経合併症発現の有無を調査した.
MESの個数と検出頻度を機械弁 (median0個と70.3%) と豚生体弁 (medianO個と26.2%) で比較すると, 機械弁であきらかに高い値を示した (両項目ともp<0.01, Mann-Whitney U test and Chi square test) .とりわけ, Bijork-Shiley monostrut弁 (median133個と92%) とCarbomedics弁 (median8個と81%) が高値を示した.全体として僧帽弁と大動脈弁の二弁置換例の方が一弁置換例よりMESの個数が多く, 一部の弁で僧帽弁置換例と大動脈弁置換例でMESの個数に差があった.しかし, 弁のサイズ, 神経合併症の有無, 心調律, 年齢及び弁置換後の期間とMESの個数や検出頻度には関連性を見いだせなかった.
これらの結果から筆者らは人工弁で見られるMESは人工弁のタイプや部位と関連しており, 直接的な臨床的意義を有さないと結論している.人工弁で見られるMESの本体についてはcavitation bubblesを反映している可能性を考察している.本研究は多数例で人工弁のタイプや部位とMESとの関連性を示した点で優れているが, 多施設で機種の異なる装置を使用し神経症候の責任血管で, もしくは神経合併症出現時にTCD検査が行われていないことと, 抗凝血薬療法の程度とMESとの検討が十分になされていないという問題点も有している.

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© 日本脳神経超音波学会
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