Neurosonology:神経超音波医学
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Stereotactic Neuro-endoscopic Surgical Systemにおける超音波吸引装置の開発と臨床的有用性
蛯名 国彦鈴木 重晴
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1996 年 9 巻 3 号 p. 85-90

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抄録

脳虚血発作の22から39%は心原性の塞栓が原因と考えられているが, その診断は塞栓や塞栓形成のrisk factorの把握に限界があるためしばしば困難である.特に洞調律でtransthoracic echocardiogram (TTE) では所見が見られない症例で, 頚動脈病変を認めない症例では診断法に苦慮するのが現状である.このような脳虚血の原因が確定していない脳梗塞患者において, 本研究ではtransesophageal echocardiography (TEE) による心疾患の診断を検討している.対象は次のcriteriaを満たした30症例である.1) 神経脱落症状が24時間以上続いたcompleted ischemic stroke, 2) 洞調律, 3) TTEで心原性塞栓の発生に関連する心疾患を有しない, 4) 頚動脈狭窄病変を超音波ドップラー検査で認めない.TTEは2.5MHzまたは3.5MHzのtransducer (Interspec Apogee CX200, Acuson 128 XP/10) を用いている.TEEは5MHzのmonoplane transducer (Interspec Apogee CX) および, biplane transducer (Acuson 128 XP/10) を使用している.TTEでは30人中16人で異常 (高血圧に伴った左心室肥大が11例, 心筋梗塞の既往のある患者で部分的なwall motionの異常が4例, 弁の石灰化9例, 大動脈弁閉鎖不全2例, 僧帽弁閉鎖不全4例, 僧帽弁逸脱1例) を見ているが, 塞栓はまったく検出されていない.一方, TEEではこの30例のうち3例に左心房先端の血栓, 2例に心房中隔動脈瘤, 7例に卵円孔開存, 19例に大動脈の血栓が描出されている.左心房先端の血栓の見られた3例では, 治療法を変更し内服薬による抗凝固療法が追加されている.左心房先端の血栓が正常洞調律の患者に出来る原因としては, ホルター心電図でも検出されないような間欠的な心房細動の出現, 左心房内圧の上昇による左心房の機能不全, 凝固機能の異常などをあげている.以上よりTEEはTTEで頚動脈に明らかな脳虚血を来たす原因が認められず, しかも正常洞調律を有する脳虚血発作症例での塞栓源となる心臓内の病変を検出する有用な補助診断であることが示唆されている.従ってこの診療法により, 従来原因不明とされた脳虚血発作症例に対する治療法にも新たな情報提供も期待される.

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© 日本脳神経超音波学会
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