The North American Symptomatic Carotid Endarterectomy Trial (NASCET) により70%以上の症候性頚部頚動脈狭窄病変に対する頚動脈血栓内膜摘除術の有効性が明かにされた.この頚動脈病変のスクリーニングには非侵襲的なduplex Doppler ultrasound studiesが信頼を得, 血流速度とspectral analysisによって狭窄度が評価されてきた.しかしこの評価法では検査部位を正常, 1%-15%の狭窄, 16%-49%の狭窄, 50%-79%の狭窄, 80%-99%の狭窄, 完全閉塞に分類してきたためNASCETの基準 (70%以上の狭窄) に対応しなくなっている.そこで本研究ではduplex Doppler ultrasound studiesにおける70%以上の狭窄病変の診断基準の確立を試みている.対象は, duplex Doppler ultrasound studiesと脳血管撮影の両者を1ケ月以内に施行した110症例である.脳血管写上の狭窄度はNASCETの方法に従って算出している.Duplex Doppler ultrasound studiesは頚部内頚動脈 (ICA) と総頚動脈 (CCA) で行い, 各々の部位で最も高いpeak systolic velocity (PSV) とend diastolic velocity (EDV) を記録している.210側の頚動脈で検討が行われ, 脳血管撮影にて70%以上の狭窄を69例 (33%) , 完全閉塞を17例 (8%) に認めている.脳血管写上の狭窄度は, 検者間でほぼ完全な一致をみている.この脳血管写上の70%以上の狭窄を診断するduplex Doppler untrasound studiesの基準としてPSV
ICA>210cm/s, EDV
ICA>70cm/s, PSV
ICA/PSV
CCA>3.0, EDV
ICA/EDV
CCA>3.3を設けている.このPSV
ICA, EDV
ICA, PSV
ICA/PSV
CCA, EDV
ICA/EDV
CCAについて各々sensitivity, specificity, positive predictive value (PPV) , negative predictive value (NPV) , accuracyを検討している.PSV
ICA>210cm/sのsensitivityは94%, specificityは77%, PPVは68%, NPVは96%, accuracyは83%, EDV
ICA>70cm/sのsensitivityは92%, specificityは60%, PPVは73%, NPVは86%, accuracyは77%, PSV
ICA/PSV
CCA>3.0のsensitivityは91%, specificityは78%, PPVは70%, NPVは94%, accuracyは83%, EDV
ICA/EDV
CCA>3.3のsensitivityは100%, specificityは65%, PPVは65%, NPVは100%, accuracyは79%という結果を得ている.以上より70%以上の頚動脈狭窄病変はduplex Doppler ultrasound studiesにて十分に検出可能であり, 各施設での診断基準の確立の重要性を結論付けている.
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