新地理
Online ISSN : 1884-7072
Print ISSN : 0559-8362
ISSN-L : 0559-8362
北ベトナムにおける農地改革後の稲作生産に関する一考察
太田 晃舜
著者情報
ジャーナル フリー

1968 年 16 巻 2 号 p. 35-43

詳細
抄録

1 原住民は伝統的自給農業をいとなんでいたが, 1800年中葉にフランスが進出し搾取をうける結果となった。 そして, 農業生産の不均等と奇形な発展により, 農民は土地を所有せず, 零細経営で貧しかった。
2 農業の支配階層からの搾取を改造し, 農業生産の増進を目的とし, 土地改革が行なわれ, その後の生産は向上して行った。 しかし, 資本主義的では農民の諸階層のあいだに分化が現われはじめ, 過去への逆戻りとなるので, 農業協同化・技術教育などで, 社会主義化へと進んでいった。
3 農地改革後米の生産増により, 米の輸入国が輸出国にまでなったが, 自然災害や政治的緊張などの影響により, 1959年をピークに漸減し, 1964年には1人当り年間精米量約23kgも不足を示し, 全国で42万トン位の不足が考えられるようになった。 しかし, 長い植民地時代を経て, 耐乏生活に慣れており, そのうえ, 伝統的自給農業形態で他の農産物もあり, 民族主義と社会主義的生産体制により, 強く組織されているので, 強いアウタルキーを示し得る地域と考えられる。

著者関連情報
© 日本地理教育学会
前の記事 次の記事
feedback
Top