次世代薬理学セミナー要旨集
Online ISSN : 2436-7567
2021静岡
セッションID: 2021.1_A-3
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データサイエンスを活用した臨床薬理学研究
*座間味 義人石澤 有紀石澤 啓介
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抄録

がんをはじめとする多くの疾患領域において、革新的な治療薬の開発により治療成績が向上し患者の生命予後が大きく改善した一方で、世界各国における一医薬品あたりの開発費は年々増加している。この原因として、臨床試験が大規模化していることに加え、難病や希少疾患などの患者数が少ない疾患領域に対しても治療薬開発が求められていることが挙げられる。近年、臨床現場で使用されている既存承認薬の新しい薬効を発見し、その薬を別の疾患の治療薬として開発するドラッグリポジショニングという創薬戦略が提案されている。既存承認薬はすでに臨床試験が行われ、ヒトに対する安全性や薬物動態に関する情報が蓄積されているので、医薬品開発にかかる時間とコストを大幅に削減できることが大きなメリットとなっている。また、医療現場に身を置く我々薬剤師にとっても、既存承認薬を難治性疾患に対する治療薬として迅速に臨床応用することができる魅力的な研究手法である。

これまで我々は、実臨床を反映した薬剤使用の臨床効果を評価するために、レセプトデータベースや副作用データベースなどの医療ビッグデータを活用した研究を展開してきた。このような医療ビッグデータを用いた研究は多様な患者層・広範囲の観察地域を網羅することが可能となる。それゆえ、新規的な薬効が予測される既存承認薬を投与された対象患者が非常に少ないドラッグリポジショニング研究の実施に適している。

本シンポジウムでは、医療ビッグデータ解析および基礎研究を融合した手法により、様々な疾患を対象として展開しているドラッグリポジショニング研究を紹介し、今後の展望についても考察する。

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© 2021 本論文著者
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