次世代薬理学セミナー要旨集
Online ISSN : 2436-7567
2021静岡
セッションID: 2021.1_A-5
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中枢神経系領域を標的とする薬物・核酸のNose-to-Brain送達システム研究
*金沢 貴憲
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抄録

アンメットメディカルニーズの高い中枢神経系疾患に対する新薬候補モダリティは、低分子薬物に限らず、ペプチド、抗体、核酸といった中・高分子医薬にまで広がり、治療薬開発への期待が高まっている。しかしながら、全身循環血流を介した脳内への薬物移行は、血液-脳関門(Blood-Brain Barrier; BBB)により制限されることから、BBBを克服した脳内への薬物送達システム(Drug Delivery System; DDS)の開発が中枢疾患治療薬開発にとって重要な鍵となる。

近年、モダリティの多様化に伴い、投与ルートも多様な進化を遂げている。その中で経鼻投与は、非侵襲性で自己投与が可能であること、初回通過効果の影響を受けないため吸収が早く、即効性が期待できるなどの利点を有すること、さらにBBBを介さない鼻から脳への直接的な薬物送達経路(Nose-to-Brain)の存在が報告されていることから、BBBの透過が期待できないモダリティの脳内への新規投与ルートとして注目されている。

しかし、モダリティを単独で経鼻投与するだけでは、その脳内への送達効率および送達領域は不十分である場合が多い。また、経鼻投与によって様々なモダリティが脳内に送達された報告は多いものの、経鼻投与後の脳内への送達機構は未だ解明されていない。さらに、脳と同様に送達困難な中枢組織である脊髄への薬物送達システム研究についての報告は非常に少ない。そのため、脊髄を含む中枢組織への効率的なモダリティのNose-to-Brain送達を達成するには、各モダリティの鼻腔から脳・脊髄への動態の理解とそれに基づいたDDSの設計が必要となる。

本セミナーでは、中枢神経系領域を標的とするDDS研究の現状について概説したのち、自身が進めている動態解析に基づいた薬物・核酸のNose-to-Brain DDS研究について、最新の研究成果を交え概説する。

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© 2021 本論文著者
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