次世代薬理学セミナー要旨集
Online ISSN : 2436-7567
2024 東京
セッションID: 2024.2_AG1
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血中を循環するマイクロパーティクルに着目した糖尿病性血管機能障害発症機構とその制御
*田口 久美子小林 恒雄
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抄録

マイクロパーティクル (MPs) は、血小板・赤血球などの血中循環細胞や血管内皮細胞・平滑筋細胞といった血管構成細胞の活性化に伴い、これら宿主細胞の細胞膜から放出される微細な膜断片である。MPs内部には宿主細胞由来の多様な分子が含まれており、これらの分子を他の細胞へ伝達する細胞間コミュニケーションの一端を担うことが明らかにされている。一方で、糖尿病の長期罹患は、血管内皮機能障害を引き起こし、これが心血管疾患の発症を誘発する要因となると考えられている。血管内皮機能障害を引き起こす要因として、さまざまな液性および血行力学的因子が挙げられるが、我々はこれまでに、細胞外小胞の一種であるMPs がその要因の一つとして重要な役割を果たしていることを示唆してきた。さらに、糖尿病病態時に産生・放出されるMPsが血管に強固に接着し、内皮細胞型NO合成酵素を包含する形で内皮細胞からMPsを再放出することで、血管弛緩機能不全を誘発する可能性があることを示唆している。MPsの血管への接着を制御できれば、心血管イベントを防ぐことができるのではないかという考えから、最近では、接着分子に注目をしている。中でも糖尿病時に発現が増加しているintercellular adhesion molecule-1 (ICAM-1) に着目し、ICAM-1とMPsの関係を検討した結果を本発表では示したいと考えている。本研究は、糖尿病性血管内皮機能障害の発症メカニズムの解明に寄与するだけでなく、ICAM-1誘導阻害剤の活用や、MPsの血管接着を阻止する薬剤の開発など、心血管イベントを予防するための臨床応用にもつながると考えられる。

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© 2024 本論文著者
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