抄録
酸の水素イオンへの解離が発熱中和反応中に生じる熱・物質移動に及ぼす影響について検討を行った.その結果,完全解離系である塩酸水溶液を用いた場合は,反応面の移動が2段階で生じることが分かった.これは反応初期において,反応面付近で生じる温度差に基づく自然対流によって物質移動が支配され,時間の経過とともに原料が枯渇し,その結果,自然対流が弱まり,やがて拡散による物質移動が顕在化した結果であると思われる.一方,解離度の小さい 酢酸またはマレイン酸を用いた場合は,反応面の移動が1段で生じることが分かった.