日本橋学館大学紀要
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大学祭における物語劇の主役を演ずる体験について-サイコドラマ風自己表現の場として-
佐々木 由利子
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2015 年 14 巻 p. 47-60

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抄録

大学祭において大学生らに物語劇の主役になって自己表現を試みてもらう実験的行事を行った。物語劇は「フランダースの犬」を脚色したもので、困難な葛藤を含む8場面からなり、参加者がどれだけ自由に柔軟に自己表現できるか、また困難な場面にどのように対処し乗り越えるかを調べることを目的とした。その結果2日間で19人が参加し、セルフ・モニタリング尺度への回答、20分の演技、事後アンケートへの記入を行った。参加者たちの発話記録が質的に分析され、発話内容の意味の似たものがグループ化されて概念の名づけが行われ、アイデア・ツリーとして表示された。セルフ・モニタリング尺度と事後アンケートで関連が見られたのは外向性の高群は低群より緊張したの得点が低い傾向であった。8場面それぞれにおいて参加者は多様な自己表現をしており、苦難の場面においても事態をポジティブにとらえたり、積極的に対処する行動をしたり、理不尽な仕打ちに対しては思ったことをきちんと伝え、自分の心情についてもしっかり把握している表現がかなり見られた。相手の立場を慮って自分の言い方を反省する者も見られた。元の物語は主人公が絵の前で凍死するが、こちらで設けた条件を満たして19人中5人が生還した。アンケートの感想記述によると、行事を楽しめたものが多いが、緊張したという者もかなりいた。参加者が演じやすくせねばならない役者側の練習が不十分で緊張気味だったのでそれが影響したと思われる。

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