日本文学
Online ISSN : 2424-1202
Print ISSN : 0386-9903
訣別と鎮魂 : 「貧福論」の位置(<特集>近世的なるもの)
萱沼 紀子
著者情報
ジャーナル フリー

1985 年 34 巻 10 号 p. 24-32

詳細
抄録

『雨月物語』の終篇である「貧福論」は、たんに秋成の金銭に関する論議を描いたものとして読むべきではない。彼が富者の倫理性について語りながら、胸のうちにあるものは養父上田茂助の姿であった。今や、養父の希望に反して商人としての道を放棄した秋成が、亡き茂助への感謝と敬愛とをこめて鎮魂の歌を奉げたものが「貧福論」である。蓄財の才に長け、同時に倫理性の高い茂助こそ富者の鑑として秋成は賛美している。

著者関連情報
© 1985 日本文学協会
前の記事 次の記事
feedback
Top