1986 年 35 巻 3 号 p. 24-35
ややもすると、改作は原作よりも低く評価されがちであるが、必ずしもそうとばかりはいえない。改作がなければ原作そのものが今日にいたるまで伝えられなかったといえる。そこには明らかに原作に対する改作者の作品解釈があり、その当時の観客の感性や思考が直接、間接に影響をおよぼしているはずである。それをもういちど評価しなおしていくことは今後の浄瑠璃研究にとっても重要な課題のひとつと考えられる。改作をそのように理解したうえで、そこに示されている改作の原作に対する作品解釈を手掛かりにして、原作の作劇法について考えてみたいというのが本稿の試みである。具体的には『傾城反魂香』を手掛りにして、その改作『名筆傾城鑑』との比較考察を試み、原作のドラマを推進する女主人公としての、みやの造型に迫る。