1989 年 38 巻 4 号 p. 1-11
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弓子の口にふくんだ亜砒酸は致死量ではない。死にはしたいが本物の毒を使ってみせるきわどさから、真の弓子像を読みとるべきだろう。弓子は極めてトリッキーな存在として描かれ、紅丸の事件さえ彼女の仕組んだ劇と読めるのだが、そう読ませてしまう語り手の独特の語り口に注目したい。弓子達紅団員は役者という設定だ。場面を描くことにこだわったこの小説の特徴的な叙述とそれはどう絡むのか。リアリズムを超えようとする作家の意欲がそこから見えてくる。
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