日本文学
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方法としての場 : フィールドとしての沖縄(パネルディスカッション「方法としての<場>」,<特集>日本文学協会第47回大会報告 I)
古橋 信孝
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1993 年 42 巻 2 号 p. 10-16

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抄録

文学の発生は、言語表現が孕まれる欲求として考えれば、いつの時代にも繰り返し訪れる問題になる。しかし、それを文学史として考えれば、文献以前を問わねばならなくなる。沖縄に口承で伝えられてきた古歌謡を日本(やまと)に文献として伝えられた以前と考えていいのは、沖縄に古代と認定していい要素が多く残されているからだ。しかし沖縄は近代社会のなかにある。したがって、ある限定を課さなければ、沖縄というフィールドから古代のモデルを作ることができない。しかも、こちらの古代再構築の作業とそれをふたたびフィールドで確かめる作業との往還運動のなかにしか古代はみえない。そういうフィールドという場の問題を考えたい。そのなかには、共同体の問題と個人の問題があり、カンカカリャ(神憑り人)と呼ばれる霊能者がその両方に深くかかわっている。そこに焦点を当てて、文学の発生を場の問題として提起してみたい。

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© 1993 日本文学協会
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