日本文学
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「漱石」という<場> : 近代メディアと言説状況(シンポジウム,<特集>日本文学協会第47回大会報告 II)
小森 陽一
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1993 年 42 巻 3 号 p. 1-12

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抄録

<場>という観念が実体化するとき、必ずその背後で、時間性と歴史性が抑圧されることになる。同時に、<場>を構成する複数性と共同性の背後で、単独性と個別性も抑圧されてしまう。<場>に象徴される空間的比喩は、その<場>それ自体が一回的に生成した前・後の歴史性を抽象し、起源を隠蔽したまま、事後的に与えられた自明性の中に私たちの認識を呪縛する。こうした自明性が、歌・物語・俳諧・小説・詩といったジャンル意識に、写本・語り・新聞・活字印刷された書物・文壇・舞台・教室といったメディア認識に絡みついている。「『漱石』という<場>」と題された発表では、(1)新聞小説というジャンル、(2)「漱石」という命名、(3)活字化された小説言説、(4)言葉といった領域を、一旦<場>という観念をくぐらせたうえで、それが自明化された<場>となる前・後を問うことになる。この実践はまた、「大会」という<場>の前・後に支えられている。

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© 1993 日本文学協会
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