日本文学
Online ISSN : 2424-1202
Print ISSN : 0386-9903
『名人伝』論
山下 真史
著者情報
ジャーナル フリー

1994 年 43 巻 12 号 p. 11-19

詳細
抄録

中島敦の『名人伝』は、名人を純粋さの体現者とする通念に対して、名人を突き詰めれば木偶に至るということ、そしてその名人を偶像化することの滑稽さを描いた作品である。川端康成の『名人』などと比較しながら、同時代の文学状況にこの作品を置いてみると、中島が太平洋戦争下の日本の<純粋さ>を徒に崇める風潮への批判、陶酔を拒否して醒めた認識を持ち続けることをモチーフとしてこの作品を書いたことが分かる。

著者関連情報
© 1994 日本文学協会
前の記事 次の記事
feedback
Top