日本文学
Online ISSN : 2424-1202
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『浮雲』の<母と息子>、あるいは<母と娘>
遠藤 伸治有元 伸子
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1997 年 46 巻 1 号 p. 54-64

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抄録

『浮雲』の文三とお勢の二人は、意識の上では西洋主義にのっとった近代的な「男女交際」を希求しているのだが、現実には、文三は旧弊な「家」や「男」としての役割意識にとらわれ、お勢もやがて現実的な「結婚」へと流されていく。本稿では、こうした二人の意識と現実の二重性を、母親との関係から解読した。文三は、故郷の母に代わる母性幻想をお勢に抱いたのであり、一方、お勢の変貌は、母・お政の導きによるものであった。

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© 1997 日本文学協会
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