日本文学
Online ISSN : 2424-1202
Print ISSN : 0386-9903
禿童異聞考 : 「童謡」と平清盛像象形の関係
柳瀬 喜代志
著者情報
ジャーナル フリー

1997 年 46 巻 5 号 p. 25-34

詳細
抄録
覚一本系の『平家物語』巻第一「禿髪」に平清盛の専横政治の象徴として書かれていた「三百人」の「禿髪」の童子のことが、広本系の延慶本『平家物語』第一本「清盛繁昌之事」や古活字本『源平盛衰記』巻一では王莽の「童謡」の故事と重ねて語られている。この「禿髪」をめぐる物語の改変は、当時の注釈学の方法に倣って清盛の野心を解明して見せ、かつ「談義」と呼ばれる講義様式をそのままに語りの構成に取り込んだと見られる。そして清盛に皇位を簒奪する企望があったことを表して、新清盛像を提出している。
著者関連情報
© 1997 日本文学協会
前の記事 次の記事
feedback
Top