日本文学
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「清兵衛と瓢箪」論 : <冬の時代>の構造
高口 智史
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1997 年 46 巻 7 号 p. 62-70

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抄録

大逆事件後の<冬の時代>とは、急速な近代化による国家と市場の論理の矛盾の拡大の結果に生じた支配者の体制秩序への危機感を背景として出現したものだったが、国家と市場の矛盾とそれへの反動としての天皇制国家主義は、民衆の生活世界に浸透し、生活や意識のあり方を規定し、抑圧した。志賀直哉の「清兵衛と瓢箪」は、清兵衛と瓢箪とに起こった出来事を通し、日常的な視点から<冬の時代>の構造を批判した寓話である。

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© 1997 日本文学協会
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