日本文学
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日本文学研究の国際化(<特集>日本文学協会第54回大会報告(第二日目))
高橋 亨
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2000 年 49 巻 4 号 p. 26-35

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抄録

国文学は急速に解体しつつある。それが近代国民国家を形成すべき制度の中に位置づけられ、日本国民たるべき国語と国の文学とを修得することに寄与してきたことからすれば、近代国民国家としての日本が解体しつつあるのかもしれない。いや、国文学は日本文学と名をかえて、国際化と情報化時代の世界の中の日本の未来に寄与することを求められているのだった。日本文学協会は、戦前の国文学が帝国主義の体制に翼賛した過ちへの批判と反省から、民主的に開かれた日本文学をいちはやくめざしてきたはずだった。文学研究の忘れものは、こうした社会文化的な役割を自覚しつつ、それとの緊張関係をもった文学への私的な思いと情熱であるように思われる。日本文学研究の国際化は確実に進行しつつある。そこで、国文学の伝統をふまえた研究者がどのような主導性を発揮しうるかということが、いま問われている。

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