日本文学
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Print ISSN : 0386-9903
誰がための涙 : 〈一億の号泣〉の一日(<特集>「一九四〇年代文学」は可能か)
坪井 秀人
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2003 年 52 巻 11 号 p. 30-39

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抄録

一九四五年八月一五日、天皇の玉音放送によってアジア太平洋戦争は敗戦を迎えたが、終戦の詔勅の意味を理解した聴き手は稀であり、雑音の中、天皇の声もうまく聞きとれなかった。このような空虚さのゆえにその声はアウラを身にまとい、国体護持を図る大きな歴史の中に敗戦の個別の経験を回収すべく機能した。本稿は高村光太郎の戦争詩における戦時と敗戦に対する姿勢を検討することで、このような〈経験の歴史化〉の機構を相対化しようと試みたものである。

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© 2003 日本文学協会
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