日本文学
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『こゝろ』の仕掛け : 手記と遺書の齟齬から見えるもの(<特集>文学教育の転回-<読む>とはどういうことか-)
小山 千登世
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2006 年 55 巻 8 号 p. 30-43

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抄録

なぜ先生は「私」に遺書を送ったのか。「私」は手紙の齟齬から、父危篤の時を選んで、「私」に自らの死を告げる遺書を送った先生の仕掛けに気付いていく。それは遺書の読み手たり得ない「私」に「先生」と類似の<罪>(父を裏切る)を体験させることで「私」の成長を促そうとしたものであった。遺書の読み手たるにはそれを体験することが要求された。ここに先生の<血>を浴びせかけられた「私」との対比で、<純白>に保たれた妻への愛を読み取ることが出来るのである。

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© 2006 日本文学協会
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