日本文学
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一九八〇年代の「植民地主義者」による「交通」 : 坂本龍一『NEO GEO』におけるアジアへの視点(<特集>近現代文学における<交通>)
広瀬 正浩
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2008 年 57 巻 11 号 p. 56-65

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抄録

一九八〇年代に柄谷行人が掲げた「交通」という概念を音楽的実践の契機と捉えた坂本龍一は、アルバム『NEO GEO』(一九八七年)のコンセプトとして、地球上の様々な音楽や文化的生産物が互いに等価であるような多元的な世界像を構想した。だがそれは、資本主義に依拠した世界市場を支え、商品の供給源として旧植民地アジアを再属領化することであった。「交通」は、戦争を容認し、植民地主義的な思考を導くという暴力的な側面を持っていたのである。

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© 2008 日本文学協会
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