2010 年 59 巻 7 号 p. 2-12
中世の予言書・未来記研究に端を発して、これに託宣書・夢想記・遺言書・置文などの未来へのメッセージを指向するテクスト群の総称として<予言文学>なる新概念を提起し、その範疇を検証した。未来に向けた予言や提言が過去をとらえ返し、現在を見つめ直す表現の機制を解析し、必然的に過去と未来をつなぐ歴史叙述となる具体相を明らかにし、特に従来あまりとりあげられることのなかった「置文」について言及、また既知の文芸も<予言文学>の観点から読み直しができることを『今昔物語集』を例に取り上げ、さらには<予言文学>を東アジアから追究すべき課題として提言した。