日本文学
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特集・日本文学協会第67回大会(第二日目)書物とリテラシー
「説草」からみる書物の宇宙
小峯 和明
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2013 年 62 巻 4 号 p. 2-9

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抄録

前近代の写本時代の書物とリテラシーを考えるために、最も基底をなしたと思われる〈法会文芸〉の基幹資料である小型冊子の「説草」を中心に検討した。「説草」の文体ともいえる「片仮名小書き体」の意義や聞書の役割にふれ、語りと文字筆録の拮抗する表現指向を取り出し、その延長に『今昔物語集』の形成を跡づけ、訳経の現場との関連性にも言及、さらに書物として忘れられた巻子の絵巻の意義を強調、『天狗草紙』を例に絵巻と「説草」の連関もとらえ、最後に東アジアの漢文文化圏における「説草」の存在にも説き及び、近代的な書物観を「書き物」としての書物に変換する方途を提起した。

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