2014 年 63 巻 5 号 p. 32-43
宮廷物語は多く性愛関係を扱うものの、どうやら肉欲そのものの発露を描いてはこなかった。性的欲望の根拠として物語が主張するのは前世の契りという因果である。この世に生を受ける以前にまで遡って、今の欲動について考えようとするのは日本の古代だけではなくて、古代ギリシアにも同様にあった。「古代」は、今の理論において最も先進的な概念のクィアから発して議論が成る。本稿は、こうした「古代」的発想から、ジェンダー、セクシュアリティで議論されてきたことを再度捉え返すものである。