日本文学
Online ISSN : 2424-1202
Print ISSN : 0386-9903
特集・図書館と文学――保存・検閲・スキャンダル
戦時下の国民読書運動
――読むことをめぐるプログレマティック――
松下 浩幸
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2016 年 65 巻 11 号 p. 40-50

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抄録

昭和の戦時下、出版や書物をめぐる統制には、言論そのものや出版業者への圧力、あるいは紙などの配給や価格への規制など様々なアスペクトがみられるが、その最終局面が読者及び読書形態への統制である。戦前に中田邦造が石川県下で作り上げた読書会運動は、やがて国策として大掛かりな国民読書運動へと拡張されていく。そして、その運動の中心を担ったのが図書館であった。本論は近代社会において個別な読書空間を提供してきた図書館が、社会教育の必要性から集団的な読書形態の可能性を追求し、さらに翼賛体制下においてその可能性を自ら硬直化させていく過程を追うことで、読書と文学にまつわる問題群を顕在化させる試みである。

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