2006 年 129 巻 p. 1-10
本研究では日本語聴解テストにおいて,選択肢提示形式の違いによる影響,さらにどのような要素が結果に影響を与えるかを考察した。その結果,文字で選択肢を提示する方が音声で提示するよりも平均値が高いことがわかった。また,問題項目の特徴によって選択肢提示形式の違いが及ぼす影響は次のとおり異なっていた。⑴語による選択肢の項目は文字で選択肢を提示すると平均値が高まるが,文による選択肢の項目は選択肢提示形式には影響されない。⑵正答を得るために談話の一部を聞き取る項目は文字で選択肢を提示すると平均値が高まるが,全体を聞いて判断する項目は選択肢提示形式には影響されない。⑶何を聞くかが明確であっても不明確であっても,手がかりの位置が談話中の前半にあっても後半にあっても,文字条件の方が平均値が高かった。これらの結果を判断材料として,問題項目の難易度調整が可能となり,問題作成の幅が広がるであろう。